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体験型作品

山の暮らしを食べる

事前予約制となります。

ご希望の方はメニューおよびイラストから予約することができます。

現代美術家 菅谷杏樹は檜原に拠点を置き、山で暮らしをしながら作品を育て収穫している。
今年のあきがわアートストリームでは菅谷自身が山から収穫し加工した食材を

山の暮らしのエピソードから着想を得た一皿のデザート(アシェットデセール)に仕立て、
あきがわアートストリーム会期中週末限定の体験型作品として発表する。
メニューとエピソードは週替わりで変わっていく。
山で暮らしている菅谷ならではの作品を自然の中でぜひ味わってみてください!
制作協力:佐藤草(キッチンカーLiquorice)

​メニュー

■日時:2023/11/4,5,11,12,18,19,25,26    15:15~ (所要時間約30分)
※15:15から始めますので、そのくらいにお越しください。

Peatixでの事前予約制 ※当日朝9時に予約受付終了します。
■参加料金:1360円(税込) 

①すでにあきがわアートストリームパスポート(1200円、前売り1000円)をお持ちの方→+1360円で体験いただけます。
②あきがわアートストリームパスポートをお持ちでない方で「山の暮らしを食べる」のみ体験の方→1360円+500円(ヴィレッジひのはら作品観覧料)
※ヴィレッヂひのはら作品観覧料500円は会場で現金にて頂戴いたします。同じ会場の他の作品も体験いただけます
③「山の暮らしを食べる」とあきがわアートストリームパスポートのセットをご希望の方→2360円(税込)のセットをご購入ください。
※全会場を見て回れるあきがわアートストリームパスポートは各会場でも購入可能です。1200円(税込)(前売り1000円)
■定員:10名様 ※定員になり次第受付終了
■場所:Village Hinohara(ヴィレッヂヒノハラ) 檜原村本宿790-2  

アクセス
バス:西東京バス数馬行「笹平」下車徒歩2分 ※笹平14:58分着(数馬行き)のバスがおすすめです。時刻表
車でお越しの場合駐車場:お客様駐車場がありますのでそちらにお停め下さい。

※お申込みのキャンセルについて
・お申込み後のキャンセル及び返金のお申し出は、11月8日(水)までにPeatixよりご連絡をお願いいたします。
・11月9日(木)以降のキャンセル及び無断キャンセルにつきましては、チケット代金の100%を頂戴いたします。

山の暮らしを食べる コンセプト

 

 私は5年前から山と里の境界で暮らしている。

 ここ住んで私に大きく影響してきたのは、異種の生き物たちの存在である。動物や植物はそれぞれの性質に従ったサイクルを持ち、時間や場所などの領域の中で生きていて、街に住んでいる限り、日常的にそれが人と多く交わることはない。

 しかし、山との境界に住んでいると、ある時期や、ある場所で不意に異種の、他者の領域に自分が入ってしまうこと、または、自分の領域だと思っていた時間や場所を共有していたと気がつくことがある。

特に、山で食べ物を取ろうとした時、それは顕著に感じる。

 

 山には美味しい食べ物がたくさんある。

 しかしそれは山の生き物に平等に用意されていて、それを得たければ、他の動物たちと早い者勝ちの争奪戦をしなければならない。動物たちは毎日山を偵察してそれを今か今かと待ち構えているのだから、片手間になってしまう私は当然いつも遅れをとっている。

 こちらの領域に入られて、手間暇かけたものを台無しにされること多々もある。ようやく整備した庭を猪に掘り起こされて大きなクレーターを作られたり、庭に植えた花や野菜の苗を「柔らかい草」として鹿に喰まれたり、そろそろ収穫どきという時に限って大群でやってくる猿にジャガイモや干し柿を略奪されたり…。

 それらはこちらが気を抜けばどんどん自分の領域を広げようとする。向こうにとっても同じなのかもしれない。領域が重なるということは、微笑ましいなんて優しいものではなく、結果的にお互いの領域を尊重し守っていく為には、常に本気のマウントの取り合いが必要になる。

 異種の生き物たちと、同じフィールドで生活して、同じものを奪い合っている。その緊張感は時にある恐怖や、怒りを感じさせると共に、自分が人間であることや、現代社会の中で生きるという矯正された何かを解し、やわらげていくような感覚もある。街に住んでいる時には無かったその感覚を、疲弊しつつもどこか面白がっている。

 

 

 そうして得た戦利品は、大抵はそのままでは食べられないものばかりだ。エグい、苦い、酸っぱい、固い。それらを食べれるように、また保存できるようにする工程と方法は多種多様で、灰でアクを抜いたり、塩や砂糖で漬け込んだり、発酵させたり、干したりと、その知恵は美味しく食べることへの執着を改めて感じさせる。

 食べられないものを加工して食べれるようにする。その時食べて美味しかったものを保存してまた別の季節で食べようとする。長い年月人間がしてきたその行為は美術と似ているような気がする。

 

 そんな山の暮らしを、私の家の周辺で収穫したものや、それを加工したものからデザートにしてみようと思った。

菅谷杏樹 Aki Sugaya
現代美術家。東京都檜原村に拠点を置き、養蜂、養蚕、農作業をしながら、作品を「育て収穫する」と捉え活動している。民間伝承や神話などをモチーフに、人間中心主義におけるの家畜との関係性、異種との未来の可能性を模索する。主に自然物を使用したインスタレーションや映像作品を制作。2022年東京藝術大学大学院美術研究科修了。主な活動に2022年個展「Ambrosia」、2018年CAF賞入選。
ホームページ:https://www.akisugaya.com/
Instagram:@gusi_ka


 

佐藤草 Kaya Sato(キッチンカーLiquorice)

2017年町田調理師専門学校卒業。料理の原点は“母の作ってくれた美味しいご飯”。ケーキ屋、チェーンの飲食店、行列の出来るカフェなど、様々なジャンルでの飲食経験を経て2022年9月、キッチンカー開業。神奈川、東京にて、調味料にもこだわった手づくりのお弁当、焼菓子、ドリンクを提供している。
Instagram: @liquorice_kitchencar

Week1

​シカの落としもの

​アブラチャンのアイス

食べられる日
11月4日(土)・11月5日(日)

 

シカ

 彼らに出会う時、私の気配にずっと前から気がついていて、、遠く高いところから静かにこちらをみている。

けれど実はすぐ近くまで来ているのはわかる。落とし物が多いから。

私が寝てる間、今日庭で私がせっせと植えた新しい美味しい草がないかを探してる。

アブラチャン

 庭の沢沿いに生えていて、丸い緑の実をびっしりつけていた。先の尖った楕円の葉をしている。なんだか美味しそうな気がして、実を削ってみると、中は透明で、あまく爽やかな匂いがした。舐めてみると苦くてとても食べられそうになかった。

 家に持って帰ってしばらく匂いで遊んだあと、調理用のストーブに入れると生木でもよく燃える。近所のおじさんにこのいい匂いの木はなんだと聞いてみたけれど、雑木だねと言って興味が無さそうだった。

 あとで調べてみると、クスノキ科クロモジ属のアブラチャンという植物らしい。可愛い名前だなと思ったが、チャンとは瀝青のことで、秋になると実は黒くなり、昔はそこから油を採り、灯りとして使っていたそうだ。いい匂いなのは香木クロモジの仲間だから。

※本デザートに含まれるアレルゲン
卵、乳、(クスノキ科植物)

​イノシシの掘り返し

​Week2

青クルミのお酒​ノチーノのセミフレット

食べられる日
11月11日(土)・11月12日(日)

 

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イノシシ

 猪突猛進というが、普段はとても臆病なようで滅多に姿を見ることはない。けれどきっと誰も見ていないところでは大胆で豪快なのだろう。彼らが来たあと畑はめちゃくちゃに荒らされているし、泥浴びをしたあとの庭には地形が変わってしまうほど大きな穴を作る。夜、庭を派手に転げ回っている姿を想像する。

 

ノチーノ

 ノチーノ-Nocinoとは北イタリアの青いクルミを使ったお酒だ。

 引っ越してしてきた頃、散歩をしていたら沢沿いにまだ若い青い実が房になっているクルミの木を見つけた。このままだと実が熟した時に沢に落ちることに気がついて、今のうちに収穫して使い道があるかどうか探すと、ノチーノが出てきた。

 夏至の頃、6月24日の洗礼者ヨハネのお祭りで仕込まれるらしい。ちょうど夏至の頃だったので、味も知らなかったけれど作ってみることにした。

 青いクルミを半分に割って、ウオッカに砂糖と漬け込む。秋にはあんなに硬いクルミはまだ柔らかく、中は透明だった。漬けた後はアクを抜くため、よく酸化させることが大切なようで、陽に当ててよく振った。数日後には全体が渋みでどす黒い液体になった。そうして冬まで寝かせる。寝かせた黒い液体は苦くてまろやかで香ばしい美味しいお酒になった。それから毎年仕込んでいる。

※本デザートに含まれるアレルゲン
卵、乳、小麦、くるみ

サルの食べかけユズ

​Week3

ゆずの丸ごとデザート

食べられる日
11月18日(土)・11月19(日)
15:15-

 

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サル

彼らは収穫の時期になると必ず一度は私たちの集落へ群れでやってきて、各家々の畑を順々に巡り、あと数日で収穫されるはずだった野菜や果物を根こそぎさらっていく。いや、正確には根こそぎではない。全部一口齧ってぽいっと捨てていく。どうせ食べるなら綺麗に食べたら良いのに、行儀が悪いのである。

その略奪が始まると、集落は猿よけの花火の発砲音があちこちからする。けれども彼らは怯まない。狙いをつけた家に人がいない時を見計らってまたやってくる。いつも先を越されてしまうけれど、柚子だけは酸っぱいからかよく熟す冬の終わり頃まで取りに来ない。

 

ユズ

古い家の庭は生活に必要なものが多種植えられている。その中でもなぜか柚子の木が多い。村のどの家も何本も柚子を植えていて、うちにも10本以上のゆずの木がある。しかしゆずはそのまま食べられるわけでもなく、梅干しや、干し柿、のように保存食というのもそんなに聞かない。どうしてこんなに植えていたのだろう。

もう随分立派な柚子の木は毎年たわわに実をつける。これをどう活用するかが毎年の課題だ。一年目は鍋に入れる程度しかできず、ひと冬毎日柚子風呂に入っても余ってしまったが、今では柚子ジャム、柚子酒、柚子胡椒、ゆべし、柚子塩、塩漬け、柚子果汁(酢の代わり)とそれなりにレパートリーが増えてきた。

※本デザートに含まれるアレルゲン
卵、乳、ゼラチン、アーモンド

ヒノキの製材

​Week4

ヒノキを製材したときのような香りアイス

食べられる日
11月25日(土)・11月26(日)
15:15-

 

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ヒノキ​

檜原は土地の98%が森林で、平地がほとんどない。私の家も山にへばりつくように建っている。ずいぶん上の世代が植えた檜と杉、立派に大きくなったが、倒す人はもういない。

どんどん木々が迫ってきて、きっとここに家が建ってから、今が一番山が近いのかもしれない。

 少しでも山を手入れして、家をなおす材料にできないかと木を倒す。チェーンソーの刄が離れると、叫ぶようにメキメキと木が鳴り、地響きと香りを立てて倒れる。

長い間この土地に立っていた、時間と生命を感じる。

 そして、製材機の無い我が家で木を製材するには途方もなく時間がかかる。

※本デザートに含まれるアレルゲン
卵、乳

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