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Honey Oath
蜜の色
アラニアの洞窟には木に登って蜂の巣を採取している「蜂蜜を採取する人」が描かれている。約 10,000 年前から 人類は木の上の巣に手を伸ばし、危険を冒して、その聖なる食べ物「蜂蜜」を手に入れようとした。
ミツバチはその神秘的な社会性と、受粉という行為、作り出す黄金の蜜によって、古代信仰において地母神の使いで あり、神聖な生き物として扱われてきた。養蜂技術が生まれたエジプト以降の時代も、ミツバチを管理するのは聖職者たちの仕事だった。そうして長い時間をかけて人々は実りの使いとしてのミツバチを飼いならす技術を発展させていき、またミツバチも人間と生きることを種として覚えていった。
そして現在、ミツバチは人工授粉、農薬、大気汚染、角の品種改良によって、謎の大量死を繰り返し、世界から減少している。ミツバチによる受粉が行われなければ界の食料の三分の一以上が実らなくなると言われているが、私たちはミツバチに変わる存在を生み出すのか、それともミツバチとともに滅びていくのか。
古代、神に属していた彼女たちはどこかで私たち人間と生きることを決めた。人間の家畜となることで種の存続は約束されたはずだった。私たちは約束を破ったのだろうか。
ミツバチ※はもう野生で生きていくことはできない。私たちもミツバチがいなければ生きていけない。なら私たちはもっと優しい関係を築き始めることはできないだろうか。
概要
今作は2016年より作家本人が実際に養蜂をしながら制作をするという、長期プロジェクトの中から生まれた作品の一つである。
養蜂家は花の咲かない冬になると越冬中のミツバチの群にキャンディーと呼ばれる砂糖を溶かして固めた餌を与える。今作はキャンディーに赤い着色料(ミツバチには有害でない紫芋の色素から作られたもの)を加え、ミツバチに場所を覚えさせ、餌として食べさせる。ミツバチが古代思想において豊穣の女神の使いであることから、キャンディーの形は古代の地母神像である「ヴィレンドルフのヴィーナス」の型を取る。 古代の人々が自然の中に見出した女神像の元にミツバチが毎日通い、それを食べて行く。そこには私の介入ががあり、 その痕跡がハチミツとなって現れる。痕跡は密の色だけなのだろうか。 人とミツバチの関係、私と私のミツバチの関係を重ねて、今までの関係と、これからきっと起こるわずかな関係の変化を感じながら。
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